『疲れない』ようになるブログ

やってみて、どうだったかの記録

【有価証券報告書から分析】チャーム・ケア・コーポレーション(6062)【PF主力級】

チャームケアコーポレーション(6062)

 

有価証券報告書や決算説明会資料、競合企業との比較などから企業分析を行った。

 

結論として、買いと判断。

 

その過程を書いていく。

   

概要

首都圏、関西中心に富裕層向けの有料老人ホーム運営。不動産活用も。

 

○この企業の魅力を3行で

・16/76件(21%)が自社物件(建築までこなせる)でコストを大きく抑えられ、提供価格も抑えられることで入居率が94%と高水準をキープ、買収した子会社の入居率も大きく改善中

・土地と建物購入後、他の事業者へ売却する不動産(こちらで運営し賃貸とすることもある)も利益に大きく貢献

・利益率の高い物件を今後もますます増設予定で、老人施設の需要も今後は増加傾向であり、収益拡大の余地が大きい

 

 

○企業をざっくり理解

売上好調、利益率も10%と良好、キャッシュも増えており安心、売上拡大のため積極的投資◎(営業CF並みの投資CF、施設新設の費用だろう。このあと内訳を確認)

 

PER:10.6 PBR:3.21

この成長率、業績でPER 10.6と、評価は低い。良い。

 

出来高は20万株いかないくらい。目立っていない。

 

事業内容は

 

①メインは介護付き有料老人ホームの経営(利益の内訳の割合は後述)

競合が多い分野だが、介護付きとなると参入障壁が高くシェアを守りやすい。かつ、有料老人ホーム(以下:老人ホーム)やサービス付き高齢者向け住宅(以下:サ高住)よりも収益が多い。

②介護分野の人材の派遣も行っている
2020年に、人材派遣会社「株式会社グッドパートナーズ」を買収、子会社化。人材派遣や訪問看護事業を取り入れた。これによる利益は、本業の介護事業に比べると微々たるもの(後述)

③不動産も始めた

建築もやっており、建てた介護物件を他企業に売却。賃料をもらい、運営はこちらでやる、または完全に相手に任せるという方式をとっている。

この③不動産の利益が大きく前期は利益を大きく伸ばした。が、それでも本業の比率がまだ圧倒的に大きい(後述)

 

キャッシュフロー

フリーCFが改善し10.8億円、営業CF約40億円と大きく上昇、財務CF(借金)が増えすぎている様子もなく、投資CFは継続しているが、現金は増えている状況。CFのパターンとしては最も良いパターン。

首都圏、近畿に施設を毎年新設しており、それが投資CFとして計上されていると思われる(後述)

キャッシュフロー、良さそう。

 

 

○割安と言える理由は?


・PER、PBRは?マクロPERは?(日経・ダウ)

株価:1223円(2022/9/3現在)

PER:10.3(低め)

PBR:3.21(高い)

 

日経平均PER 16.2 PBR 1.65

赤線:日経平均  緑線:日経PER  青線:日経PBR

 

日経のPERに加熱感なし。マクロの状況も良さそう。

米国インフレや中国バブルが破裂しそうだが、”その資金は日本へ流れてきて日本株は大丈夫派”なので割安放置株は買っていく姿勢。

 

プライム市場のサービス業:PER 21.9、PBR 2.4

プライム市場の不動産:PER 11.7、PBR 1.1

 

PERは高すぎることはなく、この業績の良さでPERは平均以下となっている。

良い。

PBRが高い。なぜか調べる必要がある。後述。

 

○業績

 

売上高、経常利益、純利益とも順調に成長。素晴らしい。

 

 

「株式会社ライク」を買収、株式取得費用0.41億円、のれん償却費1.36億円が発生したものの、ライク所有物件の売却による売却利益により純利益は大きく上昇。

他社を買って、そしてその所有物件を一部売る(利益の少ない物件?)という戦略。

ライクの残りの物件は親会社チャームが運営し、入居率を改善中。

M & Aは成功か(後述)

 

コロナ関連についての記載もある。

コロナによる入居率の変動について

 

懸念として、この記事は6月の決算だが、コロナ感染第7波によるクラスター大発生で7月〜現在は入居が大きくストップしている可能性があるということ。7月8月は感染者数が爆発していた。

 

チャームのHPには、5月まではコロナ陽性者が一人でも出るとコメントを出していた。

6月からはない。陽性者が出るのが当たり前になって、やめてしまったのだろうか。

 

この感染爆発の影響で、次期に入居率が上がらないという影響が出る可能性があるが、それでも入居率が大きく下がるということはないと思われる(利用者が感染し肺炎で亡くなって、その空いた部屋が空きっぱなしということはありえるが、大きな低下にはならないだろう)

 

ちなみに、HPにはこんなQ and Aがある。

病気や怪我で他の病院へ入院してその部屋があいても、家賃と管理費は発生するようだ。

つまり、死亡しない限りは入院中に部屋が空いてもその家賃はチャームに入ってくる。

利用者からすると嬉しくはないが、チャーム的には利益を守れる。

他の施設を調べていないので不明だが、おそらくどの施設も同様のシステムだろう。

転倒して骨折して数ヶ月入院、なんてのは本当によくあることだからだ。そしてその後、その元いた施設へ退院するのがほとんどである。つまり施設側は部屋を開けて待ってくれている。そうでないと利用者が帰るところがなくなってしまって困ってしまう。

 

まとめると、感染爆発により、入居率が予想に届かず、売上が低く出る可能性はある。

一次的なものではある(重要)が、買うのはこの結果がわかる次回の決算短信まで待った方がいいかもしれない。

 

セグメント別に見てみる

①本業の介護事業

②その他(不動産と人材派遣)

 

それぞれの収益の割合をみてみよう。

 

①介護事業

売上250億円。利益25億円。

(9ヶ月分のライク運営を含む)

(時期に8ホームを新規建築予定、後述)

 

②不動産と人材派遣

売上42.3億円。利益6.5億円。

 

売上高のセグメント比率は

介護事業:85

不動産と人材派遣:15%

 

利益のセグメント比率は

介護事業:79

不動産と人材派遣:21%

 

計算したが、表があった。

 

有価証券報告書を読み慣れていないと無駄が多いが、この経験は一回でもがっつりやっておくと、今後の読むスピードがどんどん早くなる気がする。

「あの情報はどうなってるかな、報告書のあの辺に記載あるはず、えーと、あ、あったあった」みたいな。

 

話が逸れたが、約8割が本業の介護事業で稼いでおり、こちらは順調。

不動産は計画を上回る利益のようだ。

 

経営の多角化ではあるが、本業がメイン。

不動産情報を活かして、利益に繋げている

 

ただ、この不動産事業がいまいち腑に落ちない点がある。

 

チャームが土地・建物を売って、それを賃借(チャームがお金を払ってその建物の部屋を借りて、そこを運営している)し、利益を得ているということが書いてある。

 

ん? どういうこと??

 

「アセットライト経営を志向」とあり、調べてみると

 

 

例を調べると

 

Twitterにもわかりやすい説明があった

 

つまり、ファブレス(無工場)での経営のことで、固定費の有無がポイント。

売約して賃借する、アセットライトのメリットとしては

とあり、建物を売った分、資産額が減るので、利益が出ていれば計算上ROICが高まり、利益率が高くなるという話。

 

資産額が減るので、PBR(株価÷純資産)は高くなる。利益が上がるので、PERは下がる。

PERは10なのにPBRが3もあるのはこれも関連しているか?

PBRが高い一番の理由は、新規ホーム増設に積極的、つまり投資額が大きく、キャッシュは貯めずに使っていくスタイルだから、ということだろか。

であれば、このPBRは問題ない。

アセットライトを用いる企業にPBRでの評価は不適か。

 

アセットライトとはつまり、所有と経営を分ける。

チャームは建物を売る。買った側は、それを経営する。人件費なども買った側が負担する。(経営はチャームがすることもある)

買った側が経営して、その利益の中から手数料をチャームに払う。

客でいっぱいの場合は、自分で所有していたほうが利益は高いが、そうでない場合はアセットライト方式が損失が出ないため有利。

不況時のリスク軽減になる。コロナで特に効果を発揮した。

 

資産をみてみると

 

CFと現金は

借入金は、短期が32億円、長期73億円。

 

純資産は124億円

営業CFは39億円

投資CFは−29億円

 

自己資本比率は33%と問題はない。いいのでは?

これは競合企業と比較してみないとなんともいえないが、数値的には良いだろう。

 

投資CF内訳をみてみると、投資で動くお金は主に3つで

有形固定資産の取得による支出 −26億円(ホーム新設)

有形固定資産の売却による収入 +53億円(ライクの1物件と、チャームの1物件)

子会社株式の取得による支出 -44億円

 

となっている。M & Aの-44億円が大きい。

やはり、M & Aをするために物件を売却しているのはありそう。

 

物件を売却する理由はIRで説明されおり

「資産の効率化及び財務体質の向上」とある。

 

この施設の入居率がどうだっかなど詳細はないが、何か目的があるのだろう。

売却により、7.7億円が収益となる。資産が減り、利益が増えるのでROICが改善する。

しかし長期的に見ると収益が減りそうな印象もある。

アセットライト経営の狙いはなんだろう。

 

現状、ROICを下げているのではないかとは言ったが、資産はどんどん増やしにいっている。(新施設はますます増えていく予定)

なぜ建物を新設するのと同時に、一部の建物を売りに出して、家賃を払って無工場経営しているのだろう。

だって自分で経営した方が家賃払わなくて良いじゃないか。

 

建物を買った側は、チャームが家賃を払ってくれるので、インカムゲインが得られる。

短期的には土地・建物代が高いのでマイナスだが、長期的にはインカムゲインがそれを上回って利益になると思った人が買うのだろう。

建物を売った側は、その額キャピタルゲインが得られる。短期的に大きな収益になるが、長期的には賃貸料金を払い続けるので、徐々に損をしていく、わけでもないのか?

利用者からの利用料金が入るからだ。

ややこしい。

 

収益:建物を売った金額、ホーム利用者からの利用料

費用:部屋を借りる料金

 

つまり、お金の流れは

こうなる。

 

チャームが長期的に利益を得るには、ホーム利用者の利用数および利用料が高いほどよく(つまり入居率が重要)、唯一出費は家賃だけであり、運営がうまくいけば、損をしないということ。

 

ただ、やはり建物を売らずに運営していたほうが家賃がない分、利益が多いように思う。長期的には損となることをあえて行う理由があると考える。

アセットライトの目的である、ROICなどを高く見せるために資産額を減らすのが目的なのかもしれないし、売却費で短期的に資金を増やすことが目的かもしれない。

 

ただし、ライクの保有する不動産(物件)に含み益があれば、それを売ることでチャームは自己資本比率を改善できる上に、さらに収益性の高い物件へ投資することができる。

これをやったのか。

 

ライクの物件をみてみる。HPより

施設が4つあるが、どれも大阪で駅近物件だ。要は、土地的にも価値がある。

 

にも関わらず、ライクは入居率は70%台と低かった。

一方チャームは入居率は94%程度とライクと比較すると高く、経営手腕は優れていると言っていい。

 

この、好調ではないライクの事業にチャームがテコ入れしバリューアップすることで、ライクのもつ資産(土地・物件)をより有効に使えるということだろう。

富裕層向けの老人施設経営を成長させるノウハウと自信があるチャームにとって、駅近物件を持て余しているライクは魅力的な会社に見えたと思われる。

 

ライクを買収した理由は、IRで公表されていた。

なるほど。地域が被らず、近畿のエリアを拡大できたからと。

 

さらに子会社化することで、要は近畿地方でのライバルが減る。

4ホームとも自社所有物であり、土地と物件が手に入ったことになる。

 

ライクの業績がどうだったかも記載があり

2018〜2020年と、コロナの影響もあったとは思われるが、売上は停滞していたようだ。営業利益も下がってきていた。

ライク的にも、経営は厳しいと感じていて、買収に乗ったのかもしれない。

 

 

なるほど、買収のストーリーも説明がついてきた。

 

 

では、チャームはライクをいくらで買ったのか?

株式取得で、45億円。

 

この45億円をどうしていくのか。

まず、ライクの物件を一つ売却している。(花咲新町とある)

ライクのHP(今はチャームケア)をみると

この物件を売却し、経営はやっているようだ。

いくらで売ったのか

 

22年6月の有価証券報告書には

固定資産の売却による収入は、53億円と。

花咲新町の物件だけでなく、販売用物件の売上が含まれているだろう。

 

さっきも書いたが、まとめると

 

有形固定資産の取得による支出 −26億円(ホーム新設)

有形固定資産の売却による収入 +53億円(ライクの1物件:花咲新町と、チャームの1物件:ソナーレ)

子会社株式の取得による支出 -44億円

 

となっている。

 

全体の業績が上がっており、見通しも良いので

結論としては、このライク買収や物件売却は成功とみていいと思われる。

 

M & Aをしなくても十分伸びていく土壌を作ってあるが、利益拡大に貪欲だ。

 

このM & Aだが、施設売却で短期的に資金を増やすとすると、新規事業や事業拡大の他に、大型のM &Aなんかも可能性が出てくる。

 

2022年6月の決算短信には以下の記載がある。

 

事業構想室なるものを作り、新規事業や拡大、M & Aについて動いていくようだ。

 

AI対話型ロボット事業というのは、国策のDX事業の一つ、いわゆる「老人施設にデジタルを導入して労働負担を減らす」だ。

これに関してはウェルヴィル株式会社という企業に出資しているようだ。

 

ウェルヴィルはどんなことをしているか

 

(wellvillのHPより)

 

今後、AI事業を拡大させ、たとえばAIロボットが認知症予防や転倒率低下に貢献できるというデータが出た場合、それを他社に売ることができるようになる。

これは長期的な見通し、投資になる。

施設入所による認知症の進行はこの業界の課題であり、ここが他社より優位であれば、利用者への強力なアピールポイントになるだろう。

まだ先の話ではあるが、まだレッドオーシャンであり、良い投資のように思う。

 

また、もう人材派遣についてもざっくり理解しておきたい。

 

グッドパートナーズHPより

https://www.good-partners.jp/

こんな感じの、人材派遣や人材紹介だ。

 

 

○その他

✔️現在の利益でPER20になるのは株価がいくらになったら?

 

PER=株価÷1株あたりの利益 (EPS)

20=X÷110

X=20×110

   =2200円

 

✔️競合企業との比較

本当はここは深掘りしたいが、まずはざっくりと比較。

 

まず、四季報の比較会社より2社

営業益の伸びが良い。が、重要な売上がいまいち。

詳しく調べてみたいが…

 

シダー、2022年度は赤字となっている。

 

この2社ともぱっと見の数字上は競合対象としては魅力的ではない印象。

 

続いて、業界地図より、学研HD。

(サ高住大手の学研ココファングループホーム大手のメディカルケアサービスを子会社にもつ)

学研HDは教育関連も大手で、その他に介護事業も含むなど、多角化している。

なのでセグメント別の成長を見る必要がある。

決算が9月なので2022年のデータはこれから。

これは2020年と2021年の情報。

売上+10%、営業利益+10%。悪くない。

だが数字上は、チャームが勝る。

 

競合企業と比較すると、

営業利益の成長率、営業利益率の高さなど、チャームが最も魅力的だった。

企業単体がそもそも魅力的であったが、この業界内でも投資対象として選ぶとしたらチャームだろう。

 

✔️機関投資家保有率は?

国内個人:35%

その他法人:30%

金融機関:22

外国法人:10%

エスティーケーという不動産(東京・北海道中心)の企業が大株主で30%。

「その他法人:30%」はこの会社のことだろう。

社長が16%保有。あとは銀行や機関だ。

自社株は少ない。

機関の保有率が22%と、高くはない?が、低くもない。

株の保有率的にはそこまでうれしくない結果。

 

✔️先送りの収入に注意

先送りされる。四半期決算の1Qの売上高と利益は先送りが適応されるので、低く見える可能性がある。意識して確認すること。

 

 

○ストーリーをまとめる。
チャームケアコーポレーションは、2005年から奈良県にて介護老人ホーム事業を開始、その後大阪へ移転し、東京へも進出、2018年に東京市場1部へ上場した。

首都圏、近畿中心に入居率95%前後の高水準でホームを経営、現在も新たにホーム数を増やし続け、売上は前年比+39.4%と大きく伸びてきている。利益率もここ数年10%弱をキープし、前年比は10%を超え、収益性は良好である。

競合企業と比較し高い成長を見込んでおり、負債もさほど大きくない。競争が激しい業界であるが、自社建築〜自社運営の強みを活かし、他社よりも低価格で部屋を提供している。

2025年問題と言われるように、団塊の世代後期高齢者となる時代であり、老人施設需要は今後も減らないことが予想される。その中でも富裕層向けの施設を運営し、収益性が高い。

最近はアセットライト経営志向となっており、自社建築した物件を他社へ売り、賃料を払いながら運営する営業も開始した。これによりROICは改善、手元資金も増えるため、M &Aも可能となり、大阪で経営していた他社ライクを買収し入居率を改善させて運営するなど、効果的な買収戦略が実施できている。今後も介護事業に関わらず、M &Aを推進していく予定となっている。

この先の見通しとしては、毎年ホームを10以上開設予定であり、25〜33%の売上成長率を予想しているにも関わらず、株価はPER 10倍という低さで割安圏内に放置されている。機関投資家保有比率が20%程度であり、悪くはない。

注意点としては、ホーム開設が予定よりも少なくなった場合、売上予想に届かなくなるということだ。それでも高い入居率を維持し続けている実積があるため、信頼は厚い。

 

○結論 

買い。

 

 

 

○最後に

企業分析に少しずつ慣れてきたが、非常に時間がかかる。

何時間かかったのか、この記事も何日もかけて作った。

読み返すと、有価証券報告書や決算説明会資料に買いてあることを長々と書き直しているだけのようにも見えてきてしまう。この記事に意味はあるのか。

 

ある。

 

書くいうのは、考えることだから。

 

それに、やっていて楽しい。

ここまで調べての”買い”判断なので、自信を持ってホールドできる。

種を撒いた気分である。下がったとしても、買いたいと思った価格より低いので、自信を持ってナンピンができる。

ナンピンできなくても放置しておけば買い値より上がるだろうという自信がある。

下がっても精神的ダメージがない。

 

ストーリが崩れない限り、売る理由はない。

数年は持つつもりで。長期戦だ。

 

これまでで最高の買い方ができたと思っている。

落とし穴がないかは不安だが、このやり方でうまくいかなかればもう株なんてしない。