先日分析した山洋電気
4月27日、決算。
予想通り大きく増益で着地。
配当は
当期135円→次期140円の増配予定。
株価は(下のグラフは日足)
大きく伸長した。
純利益は会社予想よりもわずかに低かったが、2024年の予想数値が良いことや、増配もし、次の増配も予想されたためか、株価は伸びた。
あとは割高ではないというのが大きいだろう。これがPER 20だったら上がらないどころか、急落していた可能性が高い。
【低PERであることの重要さ】
発表される業績がバッチリ良くても、株価が高すぎれば何をやっても下がる。しかも多くの場合は下がり続け、長期間元に戻らない。高値掴みは株式投資にしろ投機にしろ、最悪のミスのひとつだ。
高PER株にはロマンもあるが、そういう恐ろしさがある。
低PER株も長い間株価が伸びず資金効率が悪くなることはあるが、暴落しての塩漬けよりは遥かにマシだ。
ただし、低PERでも業績が一気に悪化して(一時的な特需を読めていなかった場合など)急にPERが高くなることがある。そこは常に注意する必要はある。
【他の同種企業と比較】
表は左から売上、営業利益、経常利益、EPSの値
(ニデックはM&Aや750億円の構造改革などいろいろやっており比較が難しいため除外)
ここ8年で比較してみたが、売上、経常利益、EPSの伸びがとても良い。(ミネベアミツミも良い)
2024年の通期予想も、売上の伸びはミネベアミツミに次いで高い8.5%。
一方、2024年の営業利益は軒並み1桁増益の予想に対し、山洋電気は23.7%と非常に高い予想を出している。
この予想利益の高さについては、最も重要になるポイントの一つになるだろう。(後述)
にも関わらず、2023年4月28日現在でPER 6.5と、この中で唯一割安圏にある。
PBRも山洋電気だけ1未満だ。
他はPER 14〜28、PBR 1.7〜4.1と、指標的には割高。
【PERについて】
ピーター・リンチの考え方を参考にしている。
年成長が5%なのにPERが10なら割高だし、成長率が10%なのにPERが5なら割安。年成長率と同じくらいが妥当、というようなわかりやすい考え方。
PERの数学的、統計学的な強みとかはないかもしれないが、シンプルで大変に良い。
当然、大きな期待でPER50以上でも伸びていく企業はあるが、そんなものは除外する。自分にとってはリスクが高いので、無視。
なので自分の中でPERが20を超えるのは、成長率が20%以上である必要があるので、かなり限られてくる。だからこそ保有すべき銘柄が絞れて、良い。あれこれ調べる時間もなければ、買う資金もない。
そして、成長率が高いそういった企業は、期待でPER 30〜50なのが当たり前にある。そしてそんな割高すぎる株価が、突如暴落し、ずるずる下がって半値以下になるものもコロナ渦、コロナ特需後でたくさん見てきた。
同業種で一番伸びている企業が、一番割安の指標を持っている。
今後の成長戦略が悪いわけでもない。
出来高が少なく、市場に気づかれていない。
こういう株が一番好きだ。そんなのしか買いたくない。
【決算内容をみていく】
4Q決算短信より
主要なターゲット市場である、通信装置、ロボット、半導体製造装置などのFA市場の需要は堅調に推移。
日本:売上+18.1%、利益+24.8%
北米:売上+65.6%、利益+76.5%
欧州:売上+42.7%、利益+59.0%
東アジア:売上+5.8%、利益+1.0%
東南アジア:売上+33.4%、利益+7.4%
予想通り、中国が良くない。
北米では大きく伸長。
山洋電気全体のうちの中国、北米の売上はそれぞれ10%程度。
東南アジア20%、欧州3%だった。(2022年)
続いて、重要な事業部門別の営業概況
①クーリングシステム(サーモマネジメント:冷却ファンがメイン)
年度末にかけて需給調整あったが、EV用急速充電器、一部の電源装置(?)、5G基地局などの通信機器、半導体製造装置、サーバーやストレージなどの幅広い業界からの需要が堅調に推移。
売上+37.0%、受注高−19.6%、受注残高+6.3%
生産能力は工場への投資で拡大傾向だが、これが需要減少で在庫になると辛い。
年度末にかけて需要調整あったとのことなので、1Qの結果は重要。2024年の予想が果たして妥当なのかは、しっかり分析しないといけない。
※受注高、受注残高の違いについて
今後増える収益は受注高?受注残高?
期首と期末で考えないとわからないようだ。
受注高は、ある期間、たとえば3月1日(期首)から3月31日(期末)までの受注したが未納品のものの総額。
受注残高が面倒で、期首より前での受注残高と、期中の受注高を足して(期首前も含めて、期末時点での未納品のもの、つまり、期末時点から過去の未納品のもの全て)売上を引いた金額、つまり、今後増えるのはこの受注残高、ということ。
受注高は、次の期中に全て売上になれば良いが、持ち越す場合ばこの受注残高を使う。
つまり…?
期末(今回)の受注残高が、2024年期に売上になるとされる金額、で良いのか。
前期から引き継いだ受注残高に今期の受注高を足して、それが来期にいく。
今期の受注高が低かったということは、多くの製品がすぐ納品されて売上に変換された、ということ、でいいのか?
なので、来期にプラスされる金額は、受注残高?
ということにしておく…。
②パワーシステム(電源装置など)
ここは売上比率が7%と、そこまで大事ではない分野。半導体製造装置、医療向けが堅調だったと。再生エネルギー向けが低調。(太陽光などか)
売上+0.5%
受注高−11.0%
受注残高+6.3%
③サーボシステム
EV、リチウム電池の生産設備、ウェハ搬送ロボット向けの需要が増加。
射出成形機(型をつくる機械)、工作機械(木材や金属などを切ったり圧迫したりする機械)、ロボット向けも堅調に推移。
一方、半導体製造装置向けの需要が、年度末にかけて減衰。
クーリングやパワーシステムでは堅調と書いてあったが。
半導体製造装置に対しては、ファンや電源装置は売れたがモーターが売れなかった、のか、半導体装置自体の需要が減ったのか。それならファンやパワーシステムも減るはず。なので、モーターが売れなかった、または半導体製造装置に必要なモーターの数が減った、と見るべきか。
後者だと、とても良くない事態だ。
Chat GPTに聞いてみたら
半導体製造装置の進化とともに、必要なモーターは増える、と。
それが本当なら、モーターのシェアを他の企業に取られている、と判断する。
良くはない。確かに競争が激しい分野ではある。
それでも来期の増益予想が他より高いのは、なぜだろう。納得のいく説明が見つかるまで調べる必要がある。
それにあたり、まずは半導体製造装置を作って売っている企業の業績をみてみる。
東京エレクトロン、アドバンテスト、SCREEN,キヤノンの決算内容を確認。
このうち、決算が出ているのもは、アドバンテスト、キヤノン、の2社なのでみていく
来期はSocテスタ(非メモリ)、メモリともに需要落ち込む予定。
非メモリも落ち込むの…?
主要民生機器向け(おそらくメモリだろう)の減速は、在庫調整継続の予想。
一方、高性能半導体は増加する。
「半導体検査(テスト)装置」と「半導体製造装置」は区別する必要がある。
アドバンテストは、テスト装置がメインだ。
HPより
前工程(ウエハテスト)、後工程(ファイナルテスト)ができる装置を作ることが、アドバンテストのコア事業。
テスタの世界シェアが50%超えと、大手中の大手。
ここが、世界の半導体需要は短期的に減少、と予想しており、テスト装置需要減少で来期大幅減益予想?(高性能半導体は増加するが、カバーしきれるほどではない)
ともかく、テスト装置はアドバンテストの決算的には、かなり厳しい見込みのようだ。
にもかかわらず山洋電気の2024年予想が良いのは、山洋電気は”製造装置”向けなので、対象はテスター装置に限らない。テスト装置以外の半導体製造装置の製造需要を見込んでいるのだろう。今の半導体は、短期的にメモリ関連、テスター需要は弱いが、その他の需要は堅調だ。
ウェハ搬送装置、クリーンベンチ、サーマルチャンバ、など、とにかく幅広く対象になっている。
あたりまえだが、全てのモーターやファンが半導体向けというわけでもないというのが大きいのだろう。
続いて、キヤノンをみてみる
2024年度1Q決算 もう出てるのか
コロナ特需を終えて、メモリは、弱い。それはもうどこの決算や予想をみても明らか。
一方、パワー半導体は堅調。これもまた、どこもそう。
非メモリは全体的に強い。
見通し
半導体工場の建設は旺盛な需要が継続すると想定。
山洋電気には、追い風。
続いてSCREEN社、4Qはまだ出ていないが、3Q決算をみてみる
半導体メモリメーカーの設備投資は縮小も、IoT、DX投資、EVなどでファウンドリ(半導体チップの製造:前工程)ロジックの設備投資は堅調。(3Qの話)
ここまで半導体製造装置の最近の動向を見てみたが、半導体試験(テスト)装置の需要は一服しており、また製品としてはメモリは弱いがロジックなどは強い。
試験する機器は、もう新規にはあまり売れない。多くのテスト企業が、すでに所持している段階だからだ。
だからといって半導体のテストそのものがなくなるわけではない。テスト企業(例えばテラプローブ)が所持するテスト装置が古くなったり、高性能化を求めて新規に購入するようになれば、アドバンテストの売上も戻ってくるという仕組み。
山洋電気に話を戻そう。
山洋電気の、メモリ向け関与が大きければ、業績はファン、モーターとも大きく落ちているはずなので、そうではないということは、伸びている半導体に関わっている部分が大きい。主にFAに関連しているので、メモリ云々はあまり関係がないのだろう。
半導体試験装置の需要は大きく減少する見込みだが、売上に対する半導体”試験”装置の割合は少ないのだと思われる。
半導体”製造”装置について、Chat GPTくんに聞いてみた
本当かどうかはおいておいて、概要を掴むのには本当に有能なAIだと思う。
「教えて」と言うと「ください」をつけろと毎回指摘されるのはなんなんだ。
こうみると、冷却ファン、モーターというのが、メモリを含む”半導体そのもの”の需要が増える限り装置が必要なので、冷却もモーターも種類を選ばず必要、というのが強みだ。
半導体工場の新設・改修を”国家事業”として主体的に進めていく。それには大胆な支援措置が必要。
日本半導体の命運をかけた、北海道のラピダスの始動もある。
今後は国内の半導体工場関連は、国策として需要が増える見込み。
短期的にはわからないが、FAは旺盛であり、半導体についても、取引先の需要低迷については心配無用、と考えて良いと思われる。
【山洋電気の来期予想の根拠】
決算短信には特に書いていなかった。
対象市場は縮小しない、価格改定(値上げ)でも売上はそこまで減らず利益増、円安は続くという予想だろうか。
現状、FAの動きが減衰するとは思えないので、大きく下げることはなさそうだとは思っている。
【ストーリー まとめ】
ストーリーに変更なし。
山洋電気は、冷却ファン、産業用モーターを扱う製品会社である。
成長性は20年で売上や純利益が2倍と低成長であるが、省エネや耐年数の優れた冷却ファン、高性能モーターのメイン市場である半導体製造装置、FA(工場自動化)、ロボット、大規模データーセンター、EV充電器の需要拡大が更に期待される状況であり、円安も含め2023年の利益は大きく伸長した。今後も売上の成長が期待できる。
4Q決算後に株価は高騰したが、それでもPER 6.6倍、PBR 0.88と、割安圏に放置されている。(ここ10年の平均PER 14.5)
競争企業には、オムロン、ミネベアミツミ、安川電機、ニデックなどの企業が挙げられるが、いずれも株価は評価されており、割安感はない。
懸念としては、売上の50%以上が日本であるが、現在の円安が為替利益を大きく生んでおり、この変動には注意が必要である。
売り上げよりも営業利益や純利益が大きく伸びる予想の理由については、また次回調べて考える。ここが大事。
・営業利益を損ねないのは原価高騰に対して値上げをしているためか
売上予想は控えめなので、原価高騰が落ち着くと踏んでいるのか
・為替は営業外損益なので、掛け取引での変動は経常利益に反映される
・原材料をどこで仕入れているか(原価の円安影響の大きさ 国内 or 国外)
・為替損益の影響の予想(2Qは、増えた売上のうち、41%が為替での利益だった)
例えば自動車部品業界は、円安がなければ赤字なところもある