『疲れない』ようになるブログ

やってみて、どうだったかの記録

【10年平均PERの半分しかない株】ASTI 決算分析【来期予想は控えめ?】

5月15日、第4四半期決算

予想より良く着地。過去最高益。

そして24年通期予想は、少し減益〜横ばい(今回はここを検討)

 

決算短信より

・取引先の好調な業績で売上は前期比+10.4%

・営業利益は前期比+573.6%と過去最高だったが、原材料の高騰、急激な円安による製造原価上昇、流通網の混乱による一時的な空港貨物利用でのコスト増あり、売上高営業利益率は2.92%と低値だった

・経常利益は海外子会社の円安による為替差益が1.9億円あり、21億円(前期比+149%)

当期純利益は15億円(前期比+115%)

 

つまり、この一時的(コロナほぼ終了、ロシアウクライナ中国台湾の世界情勢次第、銅高騰は長引くかもしれない)なコスト増が改善し、売上利益率が3.5%くらいに戻れば、営業利益は22億円となり、24年も過去最高を更新する計算。非常に都合よく見積もればこのくらいになる。

純利益も18億円くらいで過去最高。EPSも、もちろん過去最高を更新する。

コスト高が戻らない場合も、四輪、二輪の売上予想的には、会社予想よりもう少し上がりそうだが…

 

売上も−2.9%と減少する見込みだが、ここの主な取引先と有価証券報告書に記載のあるスズキ、ヤマハ発動機の24年業績予想を見てみる。

 

スズキの5/15決算短信より

売上台数増加予想だが、今よりは円高に向かい原材料は高騰維持で、減益予想。

 

中期成長説明資料より

インドとアフリカ。人口増大予想の市場のシェアを取っているのが大きい。

 

ワイヤーハーネスを多く搭載するEVは

どんどん増える。

 

まだ皮算用だが、こんな予想となっている。

 

 

続いて、ヤマハ

経営成績の概況が記載なく、淡白な決算短信だが

自己株買。順調な証拠と捉える。

 

また、短信は蛋白だが説明資料が豊富で、そちらからいろいろ情報みていくと

過去最高益、二輪車需要堅調、生産台数増加、ロボットは半導体中国市場低迷

新興国二輪車需要は堅調予想、ロボットも下期から回復予想

 

総じて、悪くなさそうな印象を受ける。

 

新興国の状況をみてみると

出荷台数は東南アジアではインドネシア、タイ、フィリピンが前年比+

ベトナムでの出荷が72%と減少、在庫が余っている状況。

インドが101%と、以外と控えめであった。なぜ?

 

ASTIの前期の有価証券報告書より

おそらくこれの影響だろう

 

ここでちょっと単語説明を挟む

また、ROVはオフロード専用車のこと。

 

 

北米とアジアが増大、日本は減少。日本は二輪の市場としてはもう魅力が無い。

これらの変動がASTIにどの関わるか。

 

為替の影響の記載あり、参考にする

円安で、海外子会社での粗利益が(+)、販管費が(−)、輸出入では大きく(+)

輸出では強い。

 

 

スズキ、ヤマハとメイン取引先2社の今後の予想を見てみたが、結論としては

24年通期予想は、取引先の売上は堅調に伸びる見込み。

 

 

これらを踏まえてもう一度ASTIの24年予想をみてみる。

 

なぜ売上が下がる…?

車は売れる予想だ。

車載以外の影響が大きいのだろうか。

一度ASTIのセグメントを振り返る。

 

前回の第3四半期決算分析の記事も振り返りつつ

yama-maro.hatenablog.com

 

今回の第4四半期決算短信より

・車載電装品:各種電子制御ユニット、エアコン制御システム、コーナーセンサ)

・民生産業機器:洗濯機、食器洗浄機用の電子制御基盤、通信用スイッチユニット、産業用ロボットコントローラー基盤

・ワイヤーハーネス:四輪・二輪用ワイヤーハーネス、船舶用ワイヤーハーネス

 

車載電装品:売上181億円(新車は今後増え、車載電装品は増えそう)

民生産業機器:売上216億円(食洗機は増えているが、民生機器は国内は人口減少で今後厳しいのでは?営業利益大幅減、ここが嫌な予感がする

ワイヤーハーネス:売上250億円(四輪用及び船舶用ワイヤーの販売増とあるが…)

ワイヤーハーネスの割合は、3つのうち40%超と少なくはない。が、その他2種を足すと60%弱あり、ワイヤーハーネスを上回る。

車載も民生も重要だ。

 

そして、内訳だが、四輪、船舶のワイヤーが売れているが二輪の販売増という記載がない。

産業用ロボットも増えていそうだが、民生産業機器にこのロボットコントローラー売上増の記載がない。FA拡大の恩恵についての記載がほしい。

 

山洋電気の記事でも書いたが

yama-maro.hatenablog.com

FA拡大で、電動化がどんどん進んでいる。

電動化には、多くの場合、半導体基盤、モーターや冷却ファンが搭載される。

それに伴い、それらをつなぐワイヤーハーネスも増えてよさそうだが、どうだろう。

 

民生産業機器は、HPみるとこんな感じ



 

 

二輪について話を戻す。

スズキは四輪も強いが、ヤマハは二輪だ。

ヤマハの売上増の恩恵をあまり受けられていない?のか、たまたま今回決算短信に書かなかっただけ?なのか

インド銘柄とは名ばかりなのか?

 

前期の有価証券報告書より

ベドナムの事業、ヤマハの二輪はベトナムが前期比70%と減少していたが…

今期の売上が予想超えて着地したので、大丈夫なのだろう。

 

また、5月15日のIRではこれが追加された。

例のフィリピンの新工場、リスク分散で新設されたものだ。

 

更に

11年ぶりの、国内新工場稼働。バッテリー充電器という重要製品を生産する予定。

「将来の二輪車の電動化に向けた」、インバーターも開発予定と。

…遅い、のでは?まだ大丈夫なのか?

 

インバーターについて

b2b-ch.infomart.co.jp

電動エンジンの中核、インバーター。重要だ…。

 

 

また話が逸れた。二輪車のワイヤーハーネスの売上の記載がない懸念についてだが

 

もしかしたら、ASTIは二輪の影響が少ないのだろうか。「二輪」で検索

そんなことはなさそう。

日本、フィリピンの新工場どちらも二輪向けがある。

 

また、この有価証券報告書からは

・国内自動車メーカー向けに、電動二輪車用車載充電器を量産。

ベトナムがどうなるか、やや不安。中国とベトナムの分を、順調な拡大が見込まれるインドで挽回できるのか。

この辺が気になるところ。

 

まずは国内自動車メーカーの電動二輪に、充電器を買ってもらう予定。

電動車の充電器って、リチウムでは?

ワイヤーハーネスの銅も、充電器のリチウムも、生産国が、チリ。

大丈夫だろうか。懸念の一つである。すでに銅の高騰で甚大な影響を受けている。後述するが、銅の価格は20年のコロナ開始から現在で、なんと2倍になっている。

ただ、それも含めて増益しているので、高騰が収まれば、増益が見込める。もっと高騰すれば、つらい。そうなると値上げで凌ぐか、赤字になるかだ。世界的にはどこも値上げで対応している。世界的インフレ。

 

さて、二輪用の充電器についての記載が、4Qの決算短信にはなかった。

この二輪充電器事業、うまくいっていない可能性がある。

いや、5月に稼働したばかりだからか。そうか。

 

それか、二輪の影響が少ないのは、ワイヤーハーネス業界の中でのシェアが高くないからか。

 

ここで、ワイヤーハーネスのシェアについてみてみると

2017年のネット記事より

wireharness.jp

とある。

 

また、別の記事(2022年)では

newswitch.jp

営業利益率の低さが共通の課題だ。

 

 

ワイヤーハーネスで世界シェアの高い、矢崎総業住友電気工業古河電気工業の3社をみてみる。

 

まずは住友電工

どこも同じだが、中国の影響、原価高騰、円安。
円安は+に働き、売上高は過去最高。ここも過去最高か。

 

セグメント別

 

24年の見通し

自動車関連は売上高2兆3000億円予想で、前期比+24%(!)となる

前期の売上の詳細をみると

銅価格上昇、円安、原価高騰、物流混乱、半導体不足がキー。どこも一緒。

ワイヤーハーネスは、「銅価格上昇」がそのままダメージになる。そして、これに対して後述だが「アルミハーネスが」重要となってくる。

 

今後について

「アルミハーネス」。EVは軽量化必須だからだ。

今期も銅の不足、価格高騰。

 

 

さすが住友電工、色々と規模が違う。

 

重要なのは

・自動車関連が+24%にもなる予想

・銅価格上昇がおさまらない

・アルミハーネスへの転換

の3点。

 

 

続いて、矢崎総業、ワイヤーハーネス世界シェアトップクラスの企業はなんと、東証上場していない。

 

HPに、非常にわかりやすい資料があるので載せる

創業は古いが、非常に情熱を感じる。

 

 

続いて、古河電工

電線3強。ここまでの3社のことだろう。

 

売上増の要因として、アルミハーネスの販売強化、原材料増加に対する値上げ、ロックダウン時の緊急輸送費がなかったこと、が挙がっている。

電装材料事業では、下期は車載製品の需要減少があった。

 

アルミハーネス。

 

今後の見通し

世界経済、自動車・半導体市場の”年度後半”からの好転を前提とした売上増加、としている。

 

中長期的な戦略として

EV化の加速に伴う自動車軽量化ニーズ、新車種への搭載を拡大しているアルミハーネスの優位性を活かして収益拡大、さらに半導体需要の拡大が見込まれるため半導体製造用テープ量産のための新工場建設、と。

重要なのは

「EV自動車の軽量化ニーズに応えるのはアルミハーネス」

 

 

ここまでワイヤーハーネス3強をみたが、ポイントは

①自動車需要増加に伴う、車載製品の需要増加

②銅価格上昇がおさまらず原価高騰、値上げで対応

③EV自動車軽量化ニーズに応えるアルミハーネスの拡大

だろう。

 

特に②銅の価格上昇、③アルミハーネスの拡大、に関してASTIはどう対応しているのか。

銅の価格については

diamond.jp

 

しばらく、銅は安くならない可能性が高い。チリはリチウムを国有化し利益を守ることを宣言しており、胴もその懸念がある。

 

ちなみに、リチウムは

こんな感じで

電動自動車販売数世界一の中国は、バッテリーが強いという背景もある。

 

 

銅について、前期の有価証券報告書で見てみる

 

②③銅の価格上昇、アルミハーネスについて

研究開発の項より

 

前期で、開発中。

他社はすでに開発済で、すでに車に搭載している。遅い…。

企業の規模が違うとはいえ、これはあまりに痛い。シェアを圧倒的に取られてしまっている。

ただ、伸びしろがあるとも考えることはできるか?

 

製品的な魅力は、トップ3には劣る印象が強い。

株価の低評価、割安さで勝負になる。

果たして、割安なのか?

 

住友電工古河電工と、成長性や収益性を比較してみる。

 

住友電工

10年平均PER 16.9  現PBR 0.69  現PER 13.2

株価はレンジで、伸びしろがない印象

 

10年で売上2倍

 

ROE 5〜6 営業利益率 3.5〜4.5

 

 

古河電工

10年平均PER 20.2  現PBR 0.58  現PER 13.5

株価は底で横ばい、成長性があれば期待できる形はしているが…

平均PER高すぎる

 

10年で126%。低成長。シェアは強いが、PERほどの成長率は全くない。

 

ROE 3.5〜6.0 ROA 1.0~1.18 営業利益率 1.0~2.5 収益性低い

 

 

そして、ASTI

10年平均PER 14.2  現PBR 0.47  現PER 7.0

現PERの低さが光る。

10年で株価は2倍弱、年成長平均は単純計算で6−7%くらい。

PERは、妥当ではある。が、10年平均PERからみると、半額状態

業績は過去最高なのにPERは10年平均の半分というのが、この銘柄の最大の強みだ。

(ただし10年平均が高すぎる印象は、ある)

営業利益率 2.1~2.9 低い ROE 3.8~7.5 総資産回転率1.36~1.52と、以外と良い。ずっと高い数値をキープしている。

 

この3社を比較すると

成長性:住友>ASTI>>古河

収益性:住友>ASTI>>古河

割安さ:ASTI>>>住友>古河

となる。

 

自分の投資スタイルで最も重要なのは、ある程度収益性、成長が担保されている前提での「割安さ」なので、この中ではASTIが最も魅力的で、買うとするとASTIとなる。

強みは、下落リスクが低いことと、株価の上昇余地があること。

懸念としては、成長性の低さ。これは円安、原価高騰の影響が強い。

PERの立ち位置が素晴らしいため、成長性の低さとの天秤。

もっと良い銘柄があれば乗り換えるべきだと考える。

 

 

○まとめ(ストーリー)

ASTIは、車載電装品、民生産業機器、ワイヤーハーネスを扱う企業である。

業績は売上、経常益は過去最高を更新、EPSも過去最高に近く、配当は前期の40円から23年は90円と増配した。

一方、株価の割安さをみると、直近10年の平均PERが14で推移する中で、現在 7と、業績が好調の中で割安圏にある。ここが、この銘柄最大の強みである。

ワイヤーハーネスが主力の一つであるが、シェアは大手と比較し弱い。

今後EV車の増加に伴い需要が拡大すると予想される電動二輪車のバッテリー充電器、およびアルミハーネスの生産に関してもまだ開発段階にあり、大手より大きく遅れを取ってしまっている。

一方、売上は増加しており、国内には開発用の工場を新設、国外にはフィリピンに生産増大のための工場を新設、2023年5月から稼働となっている。

これらの製品が開発、生産され、売上に反映されれば、増益の余地がある。研究開発費には注意が必要のため決算短信はしっかり見ていく必要がある。

また、24年期予想では売上がわずかに減益予想であり、詳しい理由や前提条件は述べられていない。

個人的には、民生産業に懸念があるが、車載とワイヤーハーネスは伸びるのでトントン、という予想をしているが、民生の売上が落ちないのであれば、この予想は控えめな数字であると考える。

バッテリー、アルミハーネスが成功すればホールド確定、そうでなければストーリーが変わるのでそこまで、という予定。

 

 

 

5/18 追記

決算通過、株価は大きく下落した。

この時点でPER 0.59 PBR 0.43

割安に見えるが、成長率を見るとそうでもないというのは述べた通り。

ただし、10年平均PER14と比べると半分以下なので、この銘柄の歴史上では株価は安い位置にある。

ただし、エフテックやジーテクトなど、自動車部品会社の成長率は、業界全体が低い。

 

繰り返しだが、成長率は低い。

この点を深刻に捉えるべきであった。

 

個人的に、この直後の下落だけをみると、持ち越しは失敗であった。

(まだ一時的な下落なので持ち直す可能性はあるが)

 

ワイヤーハーネスだけでいうと、今後は期待できるはずなのだが、シェア率やアルミハーネスなどで遅れを取っているのは大きな懸念ではあった。なので、下落した際にホールドし続ける根拠が、自分の中で薄かった。

上だけをみていた感はある。大きく反省。

今後、株価を上げていく可能性は当然あるし、そう予想しているがちょっと根拠が弱い。

その前の記事でも同じことを書いたのに、持ち越してしまっていた。

ワイヤーハーネスの将来性と、平均PERに対する現PERの低さの2点が根拠であったが、成長率が低いため、下げた際に買い増す根拠と自信がなかった。

下がった際の対応をあまり考えていなかったのが原因。

 

結果論から言うと、成長率に根拠がない銘柄なので、決算前売っておくべきだった。

利確千人力、一攫千金を狙わない(そもそも狙える銘柄ではない)。

自分ルールをまた破った。

 

コツコツやりなさい。

 

 

 

さらに言うと、今回の決算短信の今後の予想(超重要)が

という。

改めて見ると根拠も前提も書かれておらず、リスクだけ書いて終わる適当さ。

車載がどうとか、民生がどうとか、ワイヤーハーネスがどうとかないの?

アルミハーネス開発は?取引先の状況とかフィリピン工場とか、ないの?

こんな予想出しておいて、1Qが予想よりもなんだか調子よくいけば上方修正のIR出すの?

そのときにまだストーリーが生きていれば買えばいいの?

 

控えめな予想だからきっと今後上方修正してくる!下がった今がチャンス!と考えることもできる。が、そこまでの自信と経験がない。

この銘柄は、自分は一旦引くべき。

高値掴みではなく市況は回復の見込みのため放置して期待でもいいが、一度下げるといつ上がるかも予想がつかず、売るに売れず資金効率低下が起こる可能性が高く、それなら他に枚数増やしたい銘柄がある。

売ってから上がったら、縁がなかったと諦める。最初に調べた自分が正しかったと思うこともできる。

沢山調べたこの経験は生きる。

 

 

2023.6.6 追記

 

平均PERの解釈が間違っていた。

13−17年は10−20くらいあるが、19年以降は4台もある。コロナで3.5まで落ちた。

その後は4−6くらいで、現在に至る。

微妙だ。やはり、過去のPERがそもそも高すぎると見たほうがいい。

この銘柄を平均PERと比べるのは、よくない。

グレアム係数は割安ではあるが…