『疲れない』ようになるブログ

やってみて、どうだったかの記録

相談しない部下と、させない上司

世界基準の「部下の育て方」:著者 田口力 

を読んだ。上司として持つべき考え方が非常に面白かったので、まとめてみた。

 

 

◯はじめに

これは著者やこの本とは関係がない話なのだが、私は職場がきつすぎて辞めようとしていた時期がある。そのとき、メンタルも体調もがっつり崩した。

それから、どうやったら人はそんなことを思わずに働くことができるか、ということに強く関心を持つようになった。いい職場、いいチームってなんだろう、と思うようになり、気がついたらそういった本を読むようになっていた。

ハイレベルな成果を求められる職場は、自然と厳しくなるとは思う。でも、それって本当? 結果を出すことに必要なのは厳しさなのか? 甘さや優しさは成果に繋がらない? どうやら、そんなことはないということが、チームリーダー向けの本や部下育成の本に書かれていた。

 

本当だろうか。本当だといいな。そんな感じの理想の後輩指導の話。

 

私の意見が多分に含まれており、これは私の私による私のための記事である。

 

 

◯ポイント

・”相談してこない” 後輩は、上司に原因がある

・”よくできる後輩” と ”あまりできない後輩” の差は「能力」ではない

 

多くの上司が、そんなバカなと上記の意見に反論したいのではないかと思う。しかし、考え方としてここが特に参考になったので、自分の考えも含めてまとめる。

 

 

 

”相談してこない”  後輩は、上司に原因がある

 

◯後輩は何のためらいもなく近づいて話しかけてくれるか

自分が仕事をしているときに、後輩たちは何のためらいもなくスッと話しかけてくれているだろうか。もしかすると、様子を伺って途中で引き返したりすることがあるかもしれない。結論から言うと、それは最悪だ。

何か問題を抱えた後輩が自分に相談しようとしても、上司が近寄りがたい雰囲気を出していたとしたらどうなるか。それは後輩がいる上司なら誰もがよく知る「なぜもっと早く相談しなかったんだ」を引き起こす。しかし、その原因は相談 ”しなかった” 部下ではなく、相談 ”させなかった” 上司に原因がある、と考える。

まずそう、考えるのだ。そうであってもそうでなくても、まずはそう考える。問題の改善はそこから始まる。

 

後輩は相談 ”しなかった” のではなく ”できなかった” のである。

 

そう考えると、改善するにはどうしたらよいか、考えることができる。他人のせいにしていては何も改善されない。上司は変わらないし、後輩は成長遅いし最悪辞める。職場全体のミスも減らない。だれにとっても最悪の結果になる悪循環だ。 

 

「なぜ早く相談しないのか」という上司に対して、後輩は「あなたが怖くて相談に行けなかった」とは言えない。言えないが、実際にそれが原因のひとつになってしまっている。上司がそれを聞いた場合、怖くても仕事なんだから相談しないとだめだろと思うだろう。しかしこれは、あくまで「上司の正論」である。

相談しにくい空気をつくっている場合、それは相談しやすい空気をつくらない上司の「仕事放棄」とも言える。言ってしまえば「根性論」だ。今の時代、根性論の結果は語るまでもないように思う。(反対意見として根性論を推す本も読む必要があるとは思っている)

上司は誰もがみんなフレンドリーに明るく接しろというわけでない。クールな人、厳格な人、いろいろいるだろう。だが、話しかけてくる後輩に対して不機嫌だったり責めたり適当にあしらったり等、マイナスな態度を出すとそこで後輩の心理的安全は一気に低下する。そうなると後輩はしかるべき時に質問することができなくなり、いろいろと問題が起きてくる。

 

上司上司と、上司ばかりに問題があるようになってしまっているが、なにもかも上司の責任だとは全く思っていない。上司がいくら頑張っても問題がある後輩というのはいると思う。しかし、ここを上司側が頑張って改善することでチームの雰囲気が一気に改善される職場も多いのではないだろうか。

相談がなかったことを後輩の責任であると言うにはまず、上司が努力して相談しやすい環境を作っているか、という質問にYESと答えられる必要がある。

 

 

◯上司が持っている雰囲気は、良くも悪くもウイルスのように後輩たちに伝染する

相談しやすい雰囲気というのは、実はその後輩にだけ影響するわけではない。チーム、しいては職場全体に影響する。

上司の醸し出している雰囲気が、職場の雰囲気に大きな影響を与えるというのは、多くの人が思い当たるのではないだろうか。事実、そうらしい。

ともかく、自分にできることは、後輩に対して、自分が相談しやすい存在であるよう努めること、チームがいい雰囲気になるよう自分もいい雰囲気でいることだ。

できない後輩にイライラするのは、わかる。しかし、優秀な上司はイライラを決して表に出さない。イライラしている上司という時点で、駄目上司の仲間入りだ。

 

また、その逆で上司がだめでも、しっかりやることをこなす優秀な後輩もいる。

その場合は、うまくいっているのだからとやかく考える必要はないだろう。その後輩が優秀なだけの可能性もあるし、うまく噛み合っている理由を考えてみるのも面白そうだが、そんなことをしている暇はない。チームリーダーやマネージャーならともかく、今の自分にすべきことではない。

 

長くなったが、まとめると「相談しやすいかどうか」は現場では切実で現実的な問題であり、これがクリアできていない場合、なによりも先に改善すべきである。

 

 

”よくできる後輩” と ”あまりできない後輩” の差は「能力」ではない

 

これは目からウロコだった。

実際そうであるかないかというよりも、そう考えたほうが何倍も建設的だと気づくことができた。

 

◯部下が能力を発揮するのを「阻害」していないか

アメリカでの研究結果によると、仕事ができる人とできない人、両者の間にはその人が ”持っている” 能力という観点からは大きな差はなかった、というなんとも興味深い報告がされている。

人の能力は ”持っている” 能力と ”発揮している” 能力の、2つに分けて考えることができる。

この研究では、よくできる人間「ハイパフォーマー」とは、自分がもっている能力を十分に ”発揮している” 人である、ということが結論付けられている。逆に、よくできない人間「ローパフォーマー」は、何らかの阻害要因によって、持てる能力を十分に発揮できていない人である。

ここから言えることは、仕事のできない後輩を「あいつは能力が足りないからそうなるんだ」と決めつけてはいけないということだ。

後輩の問題をその人の能力不足のせいにしておけば、上司としてはとても楽だ。問題があるのに人事部が採用したのが悪い…教育しても能力が他の人より劣るから限界がある…上司である自分は悪くない、と考えられるから。

しかしここで「持っている能力に差はない」という前提に立つと、上司として後輩に何をすべきを考えることができる。能力を発揮することを阻害している要因を特定して、それを取り除いてあげればいい。それは新しい仕事に慣れていない等の外的要因だったり、恐怖心・やる気低下等の内的要因だったりするが、ともかくそれを見つけて、できる範囲で最大限に取り除いてあげることが、上司としての役割である。

 

 

ここまで、上司として持っておきたい考え方について本から得た情報とそれに対する自分の考えを書いてみた。長くなったのでまとめる。

 

 

まとめ

・「近寄りやすい」上司であれ

・能力が低いのは発揮できていないだけだ。その原因を探してやれ

・その態度、チームに伝染するぞ。その態度でいいか?

 

 

最後に。

 

実は、私の職場の上司が、ここまで書いてきたようなことを実践してチームの悪い空気をがらりと変えてきたという経緯がある。それに伴ってか、離職する若手も出なくなった。

この本を読んだ時、あまりに心当たりがあったため、その上司もこの本を読んだのか?と思ったほどだ。とにかく、これらを行動に移して結果を出している上司がすごい。学べば学ぶほど、職場のいいところや、あたりまえだと思っていたことが上司の行動の結果与えられているものだと気づけるようになった。「親の心、子知らず」と言うが、上司と後輩も同じらしい。そのくらい上司が変わって、自分の仕事への気持ちも激変した。

上司が変わったのか、自分が変わったのかどうかは、実のところはわからない。自分が成長して余裕が出たからかもしれない。しかし、今の自分が快適に働けているのは、自分が成長したことよりも、上司が変わってくれたから、と思っている。

いい上司を持った後輩は幸せだ。自分も頑張らないとな、と思った次第である。